【 ととのえ飲食コラム 】
今回は、退職代行から連絡が来たとき、会社が何を確認し、どこまで拒否できるのかについて考えてみました。
【前編】退職代行から連絡が来たら?会社は何を確認し、どこまで拒否できるのか
ある日、会社や店舗に退職代行業者から連絡が入ります。
「○○さんから依頼を受けています。1か月後に退職する意向です。本日以降は、残っている年次有給休暇を取得して出勤しない意向です」
突然のことに驚き、「本人から直接言ってもらわないと対応できない」と感じる方もいるでしょう。一方で、言われた内容をそのまま前提に退職処理へ進むのも、少し早すぎます。
前編では、会社が最初に何を確認し、どこまで拒否できるのかを整理します。
1.まず「本人の意思」かどうかを確認する
最初に確認したいのは、この連絡が本当に本人の意思によるものかという点です。
退職代行からの連絡だからといって、最初から拒絶する必要はありません。ただし、電話口の説明だけを鵜呑みにして処理を進めるのも適切ではありません。
例えば、次のように求めることができます。
「本人から今回の退職に関する連絡を依頼されていることが分かる、委任状などの書面をご提示ください」
様式は会社指定でなくて構いません。本人から依頼を受けていること、そして何を伝えるよう依頼されているのかが確認できれば足ります。
「退職代行だから聞かない」でも、「言っているから全部そのまま処理する」でもない。まず本人の意思を確認する、という順番が大切です。
2.誰が退職代行をしているのかを確認する
退職代行といっても、弁護士、労働組合、一般の業者では、できることが異なります。弁護士であれば、本人の代理人として交渉ができます。労働組合には団体交渉という別の論点があります。本稿では、弁護士でも労働組合でもない一般の業者を前提にします。
一般の業者にできるのは、本人の意思を会社に伝える「使者」としての役割です。本人に代わって条件を決めたり、交渉したりする権限はありません。それができるのは、弁護士などに限られます。
そのため、条件の話し合いをしても意味がなく、先方から持ちかけられても応じる必要はありません。会社側は、次のように整理すると分かりやすいでしょう。
一般の業者とは交渉しない。あくまで本人との連絡窓口として扱う。
3.退職そのものを会社は拒否できるのか
期間の定めのない雇用契約では、会社の承認がなければ退職できないわけではありません。本人の明確な退職意思が確認でき、法的に必要な期間も確保されているなら、会社は退職そのものを拒否できません。本人が指定した退職日を、会社の都合で一方的に変更することもできません。
ここで誤解されやすいのが、民法の「2週間」です。これは、退職を申し出てから最低2週間あれば退職できるという、労働者側の権利の話です。会社が「2週間後で退職日を切る」ための規定ではありません。
本人が「1か月後に退職します」と日を指定し、必要な期間を満たしているのに、会社が「では2週間後にします」と前倒しすることはできないのです。
会社として「もう少し勤務して引継ぎをしてもらえないか」と考えるなら、退職代行業者に、その希望を本人へ伝えてもらうことはできます。これは交渉ではなく、会社の希望を伝えてもらうお願いです。
もっとも、応じるかどうかは本人次第です。応じなければ、会社側だけで退職日を変えることはできません。すでに出勤しない意向まで示している状況では、受け入れられない可能性も十分に考えられます。業者が伝達そのものを引き受けない場合もあるでしょう。
4.退職日までの年休取得は拒否できるのか
退職と年次有給休暇(年休)は、切り分けて考えます。
年休には、事業の正常な運営を妨げる場合に取得時季を変更できる「時季変更権」があります。しかしこれは、別の時季に取得してもらうための権利であり、年休そのものをなくせるわけではありません。退職日が決まっている場合、その日を越えて取得時季を変更することもできません。
退職日が定まり、退職日までをまかなえる残日数があり、対象日も明確であれば、会社が年休取得を拒否することは原則として困難です。「引継ぎをしていないから年休は認めない」というだけでは、難しいでしょう。
前編のまとめ
今回のケースでは、退職についても、退職日までの年休取得についても、会社が一方的に拒否して状況を動かせる余地は大きくありません。本人の意思に沿って処理を進めるのが、現実的な着地点になります。
では、実際にどう動けばよいのか。後編で整理します。
後編はこちら →
退職代行から連絡が来たら?「対立する相手」ではなく「連絡窓口」として使う
※本稿は、期間の定めのない雇用契約で、本人の退職意思と退職日が明確であり、退職日までの所定労働日をまかなえる年休が残っているケースを前提としています。有期雇用の場合や、年休の残日数などに争いがある場合は、取扱いが異なることがあります。
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