【 ととのえ飲食コラム 】
前回に続き、今回は、退職代行業者を「対立する相手」ではなく、本人との連絡窓口として使う実務対応について考えてみました。
【後編】退職代行から連絡が来たら?「対立する相手」ではなく「連絡窓口」として使う
前編では、期間の定めのない契約で、一般の退職代行業者から「1か月後に退職、それまで年休を取得する」と連絡があり、年休の残日数も十分にある場合、会社が退職や年休取得を一方的に拒否できる余地は大きくない、と整理しました。
後編では、実際にどう対応するかを考えます。
1.会社の気持ちと、実務処理を分ける
「本人から直接話してほしかった」
「せめて引継ぎをしてほしかった」
残念な気持ちや、怒り、悲しさが生じるのは自然なことです。長く一緒に働いてきた従業員であればなおさらでしょう。
ただし、その気持ちと会社として行う退職の実務処理は切り分けて考える必要があります。「退職代行だから」と会社側が頑なになると、かえって処理を難しくしてしまうことがあります。
2.退職代行業者は「本人との連絡窓口」
ここで、次のような状況を一度想像してみてください。
本人が突然出勤しなくなり、電話にも出ない。
退職の意思があるのかも分からず、貸与品も戻らない。
そうした状態と比べれば、本人との連絡窓口が存在していることには、実務上の意味があります。
一般の業者と条件の交渉をする必要はありません。あくまで、前編で触れた使者、すなわち「メッセンジャー」として、会社から本人への連絡事項や、本人からの回答を取り次いでもらう、ということです。
3.退職届を提出してもらう
本人の退職意思と退職日を書面でも残しておきたい場合は、退職代行業者を通して、本人名義の退職届の提出を依頼できます。
会社指定の様式にこだわる必要はありません。
「そちらの様式で構いません。本人の退職意思と退職日が分かる書面をご提出ください」
業者は通常、こうした書面の様式に慣れています。会社としては、本人の意思が確認できれば足りるので、準備は先方に任せて、粛々と進めてもらえば十分です。
目的は、形式を守らせることではなく、後から行き違いが生じないよう記録を残すことです。
4.貸与品・私物・書類の連絡も窓口を通す
飲食店なら、制服、店舗の鍵、社員証、備品などが本人の手元に残っていることがあります。その場合も、次のように伝えてもらえます。
「制服2着と店舗の鍵1本を貸与しています。○月○日までに返送するよう、本人にお伝えください」
業者自身に返却の責任があるわけではありません。会社からの連絡事項を、本人に伝えてもらうということです。
店舗に残っている私物の扱い、退職後の書類の送付先、会社から確認したい事項なども、同じように窓口を通して確認できます。
5.店舗に直接電話が来たら、店長は判断しない
飲食店では、本部や経営者ではなく、本人が働いている店舗に直接電話が入ることもあります。
このとき、店長や店舗責任者が、その場で判断する必要はありません。「退職を受け付けます」とも、「そんな辞め方は認められません」とも言わないことが大切です。
「恐れ入りますが、退職に関するご連絡は店舗では対応いたしかねます。会社の担当窓口へお願いいたします」
承諾も否定もせず、担当窓口へつなぐ。この一点だけでも、あらかじめ現場の責任者と認識を合わせておくと、慌てずに済みます。
まとめ
一般の退職代行業者とは、交渉しない。本人との連絡窓口として使える部分は使う。
退職そのものをめぐる攻防に会社の時間と労力を使うより、本人との行き違いを防ぎながら、必要な処理を淡々と進める。それが、会社の負担を必要以上に増やさず、事案を円滑に収束させる実務的な対応だと考えます。
※本稿は、期間の定めのない雇用契約で、本人の退職意思と退職日が明確であり、退職日までの所定労働日をまかなえる年休が残っているケースを前提としています。有期雇用の場合や、年休の残日数などに争いがある場合は、取扱いが異なることがあります。
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